3期・49冊目 『彼岸の奴隷』

彼岸の奴隷 (角川文庫)

彼岸の奴隷 (角川文庫)

出版社/著者からの内容紹介
ありとあらゆる罪悪が襲いかかる狂気のエンタテインメント!
手と首を斬りおとされた女の死体が発見された。捜査一課の蒲生は、所轄の悪徳刑事・和泉と組み、捜査を開始する。だが、被害者と和泉が過去に関係があったことが判明し…。衝撃のクライムノベル、待望の文庫化。

いわゆる劇薬本に属する。まともな人間は登場せず(あるいはすぐ殺され)、男女の区別なく異常で偏執的で暴力的で変態的なやつばかり。猟奇的な殺人事件が発生し、警察がそれを調べるという形をとっていますが、謎解きよりも事件に関わる人物達の異常な性癖やら犯罪行為、そして秘められた過去と歪んだ感情が露になってゆく。最初の事件は何だったんだ*1というくらい派手にやってくれます。


それは警察も例外ではなく、むしろ「マルボウ*2暴力団と癒着ある刑事を追放したら半分以上いなくなる」という台詞に象徴されるように徹底的に腐敗した組織として描かれているし、熱心なカトリック信者だったはずの被害者女性もろくでもない母親で実はヤクザの愛人がいたりして。これはもう人間なんて一皮剥けば中身はドロドロした汚いものが渦巻いているんだという視点によっているんでしょうなぁ。
私なんか「壊れているなぁ(苦笑)」で済むけど、嫌悪感*3で読めなくなる人もいるかもしれんですな。特にあの矢木澤というヤクザのくだりは。


ところで物語当初はいかにも悪徳刑事の和泉と、一見まともそうだった蒲生の印象が後半以降は全く逆になっていったのが面白かったです。二人に限らず登場人物たちの容姿と言動のギャップが激しい。人間見た目じゃ判断つかないというのを極端に表現していますよ。上半身裸で夜を走る3人組(声がハモってる)が出てきて完全に変質者かと思ったら、親切な人だったり。
最後に蒲生が精神的に支障をきたしていく様はちょっときましたよ。●●が浮かぶカレーが目に浮かんでしまって嫌だったなぁ。

*1:最後にちゃんと(?)犯行は明らかにされるけど

*2:かつての捜査第四課・暴力団対策課

*3:カニバリズムが駄目は人は特に