3期・34冊目 『2001年宇宙の旅』

決定版 2001年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫SF)

決定版 2001年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫SF)

内容(「BOOK」データベースより)
三百万年前の地球に出現した謎の石板は、原始的な道具も知らないヒトザルたちに何をしたのか。月面で発見された同種の石板は、人類に何を意味しているのか。宇宙船ディスカバリー号のコンピュータ、ハル9000はなぜ人類に反乱を起こしたのか。唯一の生存者ボーマンはどこに行き、何に出会い、何に変貌したのか…。発表以来25年、SF史上に燦然と輝く記念碑的傑作に、作者クラークの新版序文を付した完全決定版ついに登場。

宇宙SFの原点と言われ、発表から既に40年経っているのだけど、「2001年」をとうに過ぎた今読んでみても古めかしさなど全く感じない、驚きに満ち溢れた作品でした。
300万年前のヒトザル集団による意外な導入部。謎の石板(モノリス)との出会いによってヒトザルは道具を使いこなすヒトとして覚醒するんですね。モノリスが何らかの意志によって遣わされたのかと推測するのですが、ここで一気に時代は跳び、宇宙進出を遂げた21世紀になって再び邂逅するも謎は深まるばかり。だけど今度は人類にどんな変化が訪れるのか期待させられます。


そして、太陽系探索の旅に出たディスカバリー号の様子を科学技術を駆使して書かれていますが、特に木星土星を始めとする天体描写が幻想的で素晴らしいですね。写真でしか見たことのない木星の巨大さ・表面を覆う重い大気や土星のリングの美しさがよく伝わってきます。ただ後半スペースゲートを抜けて、一人主人公のボーガンが体験する稀有な風景に至っては、完全には理解できなかったのは残念です(多分にこちらの想像力が不足しているせいでしょうが)。
クラークと言えばまだ『幼年期の終わり』と本作しか知りませんが、どちらも異なる次元の高みにいる意識体としての宇宙人が地球人を導くというのが共通しますね。未来の科学技術をこうまでしっかりと書きながらも、宇宙の神秘をも読者に体験させてしまうのがやはりすごいですね。