- 作者: 飯田譲治,梓河人
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/04/15
- メディア: 文庫
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- 作者: 飯田譲治,梓河人
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内容(「BOOK」データベースより)
片田舎の平凡な女子高生・彩子は、ある晩、衝撃的な夢を見た。憑かれたように、その夢の光景をキャンパスに描きあげた彩子の作品は日本中を震撼させるが…。(上巻)
もともと平凡であるはずの、平凡であり続けたいと願う彩子を待ち受けていた運命。「オリジナル」と「盗作」という概念に新たな疑問符を投げかける、衝撃のストーリー。(下巻)
平凡な女子高生・彩子が突然の啓示より描きあげた絵は誰もを感動させ、プロの評論家・画家をも唸らせるほど。彼女の絵によって立場を無くした画家志望の同級生・紫苑が偶然その絵とそっくりのモザイク*1が既に作られていることを知ってしまい、やがて彩子は盗作者として非難を受け、ひどく傷つく。数年後、過去を捨てごく普通のOL生活を送っていた彩子のもとにまたあの時のような啓示が・・・。
創作というのは、まさに生みの苦しみというか、多大なエネルギーを要すると言います。それだけに人を感動させる芸術的な傑作に対しては賞賛を得ることができるけれど、それが模倣をわかった場合には糾弾と化す。
本作の彩子の場合はまさに芸術の神の気まぐれによって、2度も2番目になってしまう悲劇を味わうのですね。そういう意味では『盗作』というタイトルはそぐわないんじゃないかなぁと読んでいて思っていたのですが、最後まで読むとタイトルに込められた著者の深い意図がわかります。
彩子と関わる人物を通して、芸術の表現だけでなく受け止め方にもいろいろ考えさせられます。彩子ようなケースは小説の中だけだろうかと思うのが常識的なところかもしれませんが、芸術作品の中には言語や人種に関係なく、まさに人智を超えた神がかりなものもあるわけで、ひょっとしたらと思わされます。相変わらず飯田・梓のコンビはこういった常識を超えた力をさりげなく日常の中に描くのがうまいです。
ごく普通の暮らしを願いながらもたびたび芸術の奔流を受け止め、波乱の人生を送ってしまったヒロイン・彩子。三度目の正直の小説では果たしてどうなるのか最後まで気が抜けない。そして辛い時でも家族や友人の存在によって救われていく様が読んでいて気持ちいいんですよねー。家族、とりわけ親と子の関係についても様々な示唆に富んでいる作品です。