3期・15冊目 『古城の風景1』

古城の風景〈1〉菅沼の城・奥平の城・松平の城 (新潮文庫)

古城の風景〈1〉菅沼の城・奥平の城・松平の城 (新潮文庫)

歴史、特に日本史に触れたくなって、それも有名な人物や出来事というより、その周辺で忘れ去られているような事柄をすくいとって歴史好きの読者に新鮮な驚きを感じさせてくれるような本。とそこまではっきり意図して探したわけではないけれど結果的にそうなった気がします。
むしろ1年前に読んだ『風は山河より』に登場する三河の諸将の事跡について思い起こすことができて懐かしかったですね。
前書きにあるように著者自らの解説本という位置付けでもある*1ので、できれば『風は山河より』と合わせて読んだ方が楽しめるでしょう。逆に言うと、家康登場前の三河について興味無いと退屈する部分があるかもしれないです。


内容は著者が知り合いの編集らと三河国城址を巡っていくのだけど、かなり苦労されています。安祥城や長篠城のように全国的に名の知れたものは別として、城主も小豪族レベルで名の知れていない城が多いので、正確な地図も少なく位置特定が難しい。堀や土居跡が残されていたり、「〜城跡」との石碑があればいいけど、跡形も無くてそこの山に城があったと推測するしかなかったり。
ただ小城一つ取っても、そこには古の人々の営みがあったわけなんですよね。残された史料からその城にまつわる武将たちの消息を追っていくさまは歴史について思索する面白さに満ち溢れています。
旅行のついでにその地方の復元された城や歴史資料館を訪れたことはあったのですが、本作を読んで、付近の城址を探しに行きたくなりましたね。

*1:時間的には『風は山河より』執筆と並行していたらしい