2期・57冊目 『老人と犬』

老人と犬 (扶桑社ミステリー)

老人と犬 (扶桑社ミステリー)

内容(「BOOK」データベースより)
老人が愛犬と共に川釣りを楽しんでいる。そこへ少年が三人近づいて来た。中の一人は真新しいショットガンをかついでいる。その少年が老人に二言三言話しかけたかとおもうと、いきなり銃口を老人に向け金を出せと脅した。老人がはした金しか持っていないと判るや、その少年は突然、銃を犬に向けて発砲し、頭を吹き飛ばした。愛犬の亡骸を前に呆然と立ち尽くす老人。笑いながらその場を立ち去って行く少年たち。あまりにも理不尽な暴力!老人は“然るべき裁き”を求めて行動を開始する。

今まで読んだジャック・ケッチャムの3作に比べれば、ホラーや残虐的な要素はだいぶ抑えてある作品。だけど、ある種の感情が欠けていて人間性に問題ある少年と父親、そしていいやつほどあっさり死んでしまうあたりにケッチャムらしさを感じますね。


感嘆すべきは、理不尽な暴力・卑劣な手段で脅しをかける敵に対して、決して屈せずに「然るべき裁き」を求めて行動する老人の意志の強さ。
老人の過去の回想が何度もあり、悲惨な事件によって家族を失ったという事実。*1
そうした上で冒頭で死んでしまった愛犬(RED)とは、家族と同じくらい、かけがえの無い存在だったことを感じさせてくれます。
こういったら失礼ですが、今回はまっとうな形で家族の絆の大切さが描かれているようですね。


最後はまさに暴力対暴力の決着になってしまったのが、まぁアメリカ的(やられたら、倍にしてやり返せ!?)というか、もう少し捻ってくれるかと思ったのに・・・とやや不満が残ります。

*1:残っているのは離れて住んでいる娘のみ。その娘も悩みをかかえている