2期・50冊目 『幼年期の終り』

幼年期の終り (ハヤカワ文庫 SF (341))

幼年期の終り (ハヤカワ文庫 SF (341))

ストーリーはこちら。
ウィキペディア・幼年期の終り
来訪当初から謎に包まれたオーバーロードの正体、穏便ながら徹底された管理に対して反抗する地球の人々など気になる要素がてんこもり。そして後半明らかにされる驚きの宇宙の真実。最後まで飽きさせることはありません。人類の進化をテーマにした物語のスケールの大きさにも圧倒されました。


偶発的な事故の拡大によってアメリカの人々が否応なしに進化のうねりに取り込まれてしまった『ブラッド・ミュージック』に対し、極度に進化した異性人(オーバーロード)によって管理されつつ、"幼年期の終り"を体験する人類。
どちらに身を置きたいかと思えば、そりゃ『幼年期の終り』でしょうなぁ。少なくとも戦争も飢饉も無い理想的*1な数十年を過ごせたわけですから。もっとも進化が訪れる様が異様なのは同じか。


見ものは後半明かされるオーバーロードの容姿とその役割。
他のレビューを読んで気づいたのですが、キリスト教世界である欧米では、日本人が思う以上にその衝撃度は大きかったのでしょうなぁ。そのあたりも想像しながら読めば、この作品が持つ深みにもっと早く気づいたかもしれません。


そしてクラークの「清澄なイメージを平易な言葉で紡ぎ出す」能力の賜物か、その様が読む者にまるで映画のようにイメージさせてくれます。
圧巻は最後の世代が「修行」を終えて宇宙へ旅立つラストシーンですが、その前の進化に目覚め始めた少年が夢の中で見た遥か彼方の惑星のシーンが幻想的ですごく良かったですね。

*1:何もかも手放しに素晴らしいとは言えないのですが