- 作者: 宮城谷昌光
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1995/12
- メディア: 文庫
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今まで長編ばかり読んできた宮城谷昌光ですが、初めて短編集を買ってみたけど、これが結構面白い。
難点は地図が付属していないので、土地鑑がまったくつかないのですが、これからは殷周〜春秋時代の中国大陸図を持ち歩いた方がよさげ(笑)
まぁ、後世ほど舞台は広がっていなくて、ほぼ中原のまわりで動いていたようです。楚や呉は周王朝盛んなころは蛮族扱いだったようで。
今回特に印象に残ったエピソードとして、即位後3年も政治に関わらなかった高祖武丁を口がきけなかった人物とし、紆余曲折の後に文字を発明したことで初めて公に言葉を発したこと。*1そして蛮族は大きい弓矢を扱うということで、「夷」という漢字が作られたこと。*2
解説によると、「夷」の発見は作品ができるきっかけでもあったようです。
各編で名臣・奸臣さまざまな人物が出てきますが、加えて魅力有る女性が登場時からして印象的です。
- 『妖異記』笑わない皇后・褒ジ(女偏に似)
体内に日か月かを宿しているのではないか。
遊王にそうおもわせるほど褒ジ(女偏に似)の膚肌は嘩(かがや)いている。奇跡のような明るさであった。
- 『鳳凰の冠』夏姫の娘・季邢
新婦はみずからの賢さにやわらかさとうるおいをもたせることができるようである。それは口調と声音でわかる。耳ざわりな鋭さがない。叔向はかねてから自分が望んでいた妻を得たことをはやくも実感した。
ちなみにこの作品では、同じ賢婦であってもだいぶ性格の違う叔向の母との対比がいろいろと考えさせられます。
春秋時代であれば、『重耳』や『夏姫春秋』のすぐ後の頃の人物が出てきて、前に読んだ作品から世界が広がっていくのが楽しいです。
『晏子』や『子産』といった同じ春秋時代の作品も読みたくなりましたよ。