45,46冊目 『不撓不屈(上・下)』

不撓不屈〈上〉 (新潮文庫) 不撓不屈〈下〉 (新潮文庫)
作者: 高杉良
出版社/メーカー: 新潮社
発売日: 2006/01
メディア: 文庫

たったひとり、国家権力に抗した男は不屈の精神力で勝利を勝ち取った

そんな内容紹介の一文に惹かれ、今話題の作品を読み始めました。


飯塚事件と呼ばれる一税理士と国家権力との闘い、そもそものきっかけが、公開質疑の席で飯塚毅氏によってやりこめられたことによる逆恨み的な感情によるものなのです。
これが権力を持った税務官僚だったから堪らないですね。マスコミや検察まで動員して、あの手この手で屈服させようとする。
普通の人間だったら、きっと途中で根を上げて屈服していたことでしょう。
支援の手紙を書いた一税理士の手紙の中に、「高い見識と強い精神力を持った飯塚氏だからこそ、ここまでの闘いに持ち込めたので会計業界としては良かった」という内容があります。
飯塚氏が会計士とだけでなく、職業人としてまさに類稀な人物であったわけです。


結果的に勝利したとはいえ、嫌がらせのような業務妨害と、長期化する裁判によって、精神的・身体的負担はもとより生活にも窮乏するまで追い詰められます。
そこには本人の強さだけでなく、家族をはじめとする様々な人々の支援によって支えられたのが大きかったわけです。どんなに強い人でも、1人では決して人生を勝ち抜いてはいけないということですね。


さて、内容的にですが、上巻は飯塚事件の発端から国会審議へと発展していく様、そして間に飯塚氏の前半生の紹介を挟んで、怒涛のような急展開で目が離せません。
ただし高杉氏の作品の特徴として、会話シーンがワンパターンというか硬いのは仕方ないですねぇ。
そして下巻は資料の引用部分が多い上に長く、読む勢いが減じてしまうのは確かです。正確を期する為に仕方無い部分もあるのでしょうが・・・。
ノンフィクション小説というより、記録を読んだという印象を持ってしまいました。