32冊目 『重耳(中)』

重耳(中) (講談社文庫)
作者: 宮城谷昌光
出版社/メーカー: 講談社
発売日: 1996/09
メディア: 文庫

武公(称)の長年の悲願であった、晋の本家といも言うべき翼を滅ぼしたあたりから中巻は始まります。
この戦いで多大な戦功を挙げた重耳は名声もあげて、太子ではないものの明るい将来が見えたかに思えますが、称の後を継いだ詭諸(きしょ:称の子で、重耳らの父)が驪戎(りじゅう:辺境の異民族)征伐を始める頃から暗雲が立ち込めます。
結果的に詭諸は捕虜として得た驪戎の娘(驪姫)に夢中になり、臣下の諫言を聞かなくなるという、まさに亡国への道の黄金パターンですね。
実は出征前に「戦いには勝つが、凶事も引き込む」という占いの結果も出されているのです。
占いと聞くと、現代では何やらいかがわしいような、オカルトなイメージがありますが、日本でも陰陽師という言葉が残っているように、ある時期までは立派な職業でもあり、国の機関でもあったわけです。
いわゆる神頼みではなく、情報収集と状況判断に優れていなければ務まれなかったのでしょうね。
物語中でも占いによって出された予言が見事に的中する様が描かれています。
中巻の後半では、驪姫に惑わされた詭諸は彼女との間に生まれた子を王位につけたいが為に、次第に太子や公子達を憎みはじめ、やがて太子である申生は自殺に追い込まれ、第2公子である重耳は百人に満たない部下と放浪の憂き目に遭います。
公子と言えど既に40の齢に達した重耳は、母の出身部族である白狄(はくてき:もともと晋に友好的な部族)の地で一時の安息を得ますが、先行きが見えない状況でいったいどうなるのかが気になるところで下巻に移ります。