真田一族のこと

goldwell2006-03-08

先日「歴史小説が読みたい!」とのことで人力検索はてなで質問(現在継続中)し、有効な回答も早速集まっているわけだが、悲しいことにただいま金欠である。少なくとも今週一杯は書籍購入を我慢をせねば昼飯さえ買えなくなってしまう。
誰か図書券でいいから10万円分くらいお恵みを〜、ついでに本を読む時間も与え給えぇ!


そんなわけで、100冊読書を始めて以来初の再読をしている。何を読むかにあたって書棚前で小一時間悩んだ末に、先の質問の例に使った『真田騒動 恩田木工』にした。購入してからおそらく5年以上経っているので、内容をすっかり忘れていた。これって江戸時代に入ってからの真田藩が舞台の短編集であり、前半は信之(信幸)が主となっている。
ま、感想は読了後ということで、今日は真田氏に関する個人的な戯言を一つ。
私の真田氏との出会いは定かでないが、子供のころの漫画日本史のシリーズでの関が原の戦いや大阪の陣のくだりであったような気がする。やはりまずは真田幸村(信繁)の格好良さに惹かれた(そのあたりが多くの真田ファンが一度は通る道なのかもしれない)。小説としては中学生の頃だと思うが、柴田錬三郎の『猿飛佐助』『真田幸村』が初であったようだ。


ちなみに地理的に何とか日帰りで帰って来られる所に住んでいたので、今はなきJR信越線(高崎〜長野間)に乗って上田城跡には3回行った。3回目に行った時には大手門を改修していたが、もう10年近く経ったので、とっくに完成しているのだろうな(見に生きて〜)。
⇒調べたらとっくに修復されて綺麗になった大手門の写真がいくつも見られた。
そういえば上田に行く度に「幸村の城」というキャッチコピーは正しくはないだろーといつも思う。「真田昌幸の城」もしくは「真田信繁(幸村)が青年時代まで一族と過ごした城」が正しいのだろうが、これも観光目的の為か・・・。


その後、幸村贔屓は続き、時代劇や映画も見た。特に印象に残っているのが松方弘樹主演の『真田幸村の謀略』だったな。最後は萬屋錦之介演じる家康(まさに腹黒な悪役がはまっていた)がパニクって逃げ回り、漸く逃げ切ったと一安心したところを一閃!
幸村ファンが溜飲を下げられる何て素晴らしい娯楽映画なのでしょう!


徐々に知識が増えていく(マニアっぽくなる)にしたがって、今度は父昌幸や祖父幸隆の方に目が行くようなった。その頃読んだ本で良かったのが、南原幹雄『謀将 真田昌幸』真田氏がまだ海野氏を名乗っていた頃からの小説で実に為になった作品でもある。
幸村の人生の中で前半に比べて、大阪の陣の活躍があれだけもてはやされる(立川文庫の影響が大きい)もとを作ったのはやはり昌幸の活躍があるのではないかと思った。江戸時代、徳川氏の立場上、あえて仇敵を強く評価するという可能性もあるかもしれない。
没落した一族を率いて武田氏に仕えて「智謀、信玄を上回る」とも言われ、村上氏の戸石城を謀略によって攻略した幸隆も大した人物であるし、わずか10万石程度の領地で上杉・北条・徳川といった大名と硬軟織り交ぜた駆け引きを弄して家名を保った「表裏比興ノ者」と秀吉に言わしめた昌幸もなかなか喰えない人物である。
ちなみに戦国時代を舞台にした架空(IF)歴史小説では昌幸はキーパーソンとして大人気である。


さて、ここで一つ妄想。
真田幸隆・昌幸父子がもし信州の山地ではなく、京に近い場所に本拠を構えることが可能であったら歴史は大幅に変わっていただろうか?
うーん。思うのだけれど、日本の山がちな地形を生かした戦いを得意とする優れた武将は多いがその中でも政略までも群を抜く能力を持つ武将は少ない(楠木正成あたりが代表格か)、逆に平原の大会戦を得意とする武将は更に少ない(まず思いつくのは徳川家康)。いわばゲリラ戦・正規戦のそれぞれ戦いにも得意不得意がある。真田一族は前者の代表格に当てはまるのではないか。
故に平野部での様相がどうなるかは全く未知数である。ま、戦国期に京近辺で小競り合いを繰り返していた有象無象の武将よりはよっぽど有能であることは言うまでもない。
大勢力を相手取った駆け引きの実績もあることだし、非常に興味を惹くIFである。ひょっとしたら松永久秀宇喜多直家のように主家乗っ取りを企てていたかもしれない。


さて、3人について書いている内に、思ったより長くなってしまった。もう一人、信之(信幸)についても触れなければならない。
何よりもこの人は、父と弟の残してくれた名声のおかげで後半生を苦労していくわけになったのだから皮肉である。


おっとこれ以上書くと今読んでいる本のレビューになっちまう。いい加減疲れたのでこの辺で・・・。


蛇足ながら、『別冊・歴史読本』の「真田一族のすべて」は真田ファンにとっては非常に参考になる本である。真田氏の子孫の方々が執筆にあたっておられるし。私はたまたま古本屋で入手できたが、入手し難いのが難点。
※写真は近年、修復された大手門